こんな話を聞いたことはありませんか?
6時間睡眠を2週間続けると、2〜3日徹夜したのと同じくらい、パフォーマンスや認知能力が下がるというお話ですね。
結構有名な話ではあるんですが、とても誤解を広めやすい話でもあるので、今回はその誤解を解く動画となっています。
というのも、5月12日に友人のYさんより、「Yahoo!の記事でこの内容を見たんだけど、これって本当なの?」というふうに、僕の方にLINEで質問が来たからです。
なので今回は、そのアンサー動画ともなっています。
そのYahoo!記事というのがこちらですね。
「6時間睡眠を2週間続けると3日連続徹夜と同じ状態。実験でわかった睡眠とパフォーマンスの意外な関係」
なかなかショッキングなタイトルですね。

5月11日にYahoo!さんより配信されているものではあるんですが、読んだ方はいらっしゃいますか?
この記事を読んで、「6時間睡眠って徹夜と同じぐらいパフォーマンスが下がるんだな」と思いましたか?
それとも、「嘘っぱちでしょう」と思いましたか?
あるいは、「なんとなく短い睡眠だとダメなのかな?」と、不安になってしまいましたか?
この記事は大きな誤解をとても生むものとなっています。
では、具体的にどんな記事の内容だったかというと、記事の全文ではなく、睡眠の部分だけ抜粋してお伝えします。
ウーターソンは、睡眠不足とパフォーマンスの関係に関する有名な研究に言及しました。この実験では、被験者を4つのグループに分けます。2週間にわたり、一晩に4時間、6時間、8時間の睡眠を続けるグループ、そして3日間連続で徹夜をする(不運な)グループです。
実験期間中、各群の被験者には様々なタスクを行わせ、結果を評価しました。最もパフォーマンスが高かったのは、予想通り、8時間睡眠のグループでした。意外だったのは、4時間睡眠と6時間睡眠のグループの結果でした。本人たちは大した影響はないと感じていたにもかかわらず、3日間連続で徹夜したグループと同じくらい成績が悪かったのです。
この研究結果は、6時間未満の睡眠は、まったく寝ないのと同じくらい生産性に悪影響を及ぼすことを示しています。
Yahoo!:6時間睡眠を2週間続けると「3日連続徹夜」と同じ状態…実験で分かった睡眠とパフォーマンスの意外な関係
これは3つの大きな誤解を生む内容となっています。
大きな誤解というのは、「6時間の睡眠=NGというのが誤解」であること。
そして、ここに書いてある「4時間、6時間、8時間というのは、睡眠時間のことではない」ということ。
さらに、「4時間グループ、6時間グループ、そして3日間徹夜グループが、同じくらい成績が悪かった」というところが、誤解を生みやすくなっています。
実は、内容自体には嘘は書いていないですけど、本当のところを言っていないので、読んでいる人がかなり誤解する内容となっているんですね。
ちなみに、言及している実験というのは、ペンシルベニア大学医学部による2003年の睡眠不足とパフォーマンスの関係を実験したものなんですね。

では、どんな実験だったかというと、
48名の健康的な成人を集めて、8時間睡眠グループ、6時間睡眠グループ、4時間睡眠グループ、完全徹夜という4つのグループに分けます。
分けた人数というのは、9人、13人、13人、13人です。
それぞれのパフォーマンスがどれぐらい低下するかどうか、というところを調べているものになってくるんですね。
まず、「48名って少ないんじゃない?」と思われる方もいらっしゃるかもしれないんですが、実験の一つとして考えた上では、特に問題ない、いい実験だとは思います。
ただ、この実験一つで何かの結論を出すというよりは、この実験を一つの材料として研究を進めていく、という実験ですね。
では、誤解してしまう一つ目の「6時間睡眠=NG」というところについて、詳しくお話ししていきます。
大きな誤解①「6時間睡眠=NG」
まず、この記事を見ると、「6時間睡眠=NGなんだな」と思うんですが、これは誤解ということですね。
というよりも、この実験では「6時間睡眠=NG」ということはわからない、というのが、睡眠に少し詳しい方であれば、わかる内容ではあるんですね。
というのも、今回の記事にもあったんですが、4時間睡眠グループ、6時間睡眠グループ、8時間睡眠グループと分けていたと思うんですね。
このグループ分けができる時点で、「6時間睡眠=NG」とか、「8時間睡眠がいい」といった結論は出せない、というのがわかるんですね。
なぜわかると思いますか?
それはですね、「4時間・6時間・8時間のグループに分けられる」ということは、「集めた48名は、実験前の平均睡眠時間が8時間前後」ということがわかるからです。
なぜ「平均して8時間前後の睡眠を取っていた」とわかるかというと、基本的に人というのは、自分の平均睡眠時間よりも長い睡眠時間を、意図的に取り続けることができないからです。
しかも、それを実験という、ちょっとプレッシャーがかかる場面で、2週間ずっと自分の睡眠時間を伸ばし続けるということは難しいんですね。
つまり、もともと8時間前後の睡眠が取れていないと、そもそも4時間・6時間・8時間グループに分けることができないんですね。
この時点ではあくまで推測です。
ただ、こちらの実験の論文の方にも、実験前の平均睡眠時間は書いていました。

集められた48名というのは、ざっくり言うと7時間30分から8時間30分、平均すると8時間前後は眠れている人たちを集めているんですね。
となると、この実験が本当はどういう意味なのか、というのが見えてきます。
これは「4時間睡眠グループ」「6時間睡眠グループ」「8時間睡眠グループ」と言っていますが、実際には、
- 8時間眠れていた人が、そのまま8時間眠るグループ
- 8時間眠れていた人が、2時間睡眠時間を削って6時間で眠るグループ
- 8時間眠れていた人が、4時間睡眠時間を削って4時間で眠るグループ
なんですね。
「6時間睡眠」と「普段8時間眠っている人が2時間削って6時間で眠る」というのでは、大きな違いがあるんですね。
当然ながら、睡眠時間を削れば眠気は出やすくなりますし、いつもと違う睡眠時間なので、脳のパフォーマンスというのは下がります。
なので、「6時間グループはパフォーマンスが下がるよね」という結果になるんです。
この記事を見ると、「6時間睡眠を取り続けると、パフォーマンスに強い悪影響が出る」と誤解してしまうんですが、実際には、「いつもより睡眠時間を2時間縮める生活を2週間続けると、パフォーマンスが下がるよ」という結果しか、この実験からはわからないということですね。
大きな誤解②「睡眠時間」
今回、「4時間睡眠グループ」「6時間睡眠グループ」「8時間睡眠グループ」という話を聞いて、
「4時間グループの人は4時間眠った」
「6時間グループの人は6時間眠った」
「8時間グループの人は8時間眠った」
と思いませんでしたか?
でもこれって、睡眠時間でグループ分けしているわけじゃないんですよね。
じゃあ、睡眠時間ではなくて、何で分けているのかというと、これは「ベッドの滞在時間(TIB)」で分けているんです。
実際に、論文にもきっちり記載しています。

つまり、4時間グループというのは、「4時間眠った人」ではなくて、「4時間ベッドにいた人」なんですね。
なので、
- 4時間グループは、ベッドに入って4時間後に出る
- 6時間グループは、ベッドに入って6時間後に出る
- 8時間グループは、ベッドに入って8時間後に出る
という、「ベッドにいた時間」、つまり「ベッドの滞在時間」なんです。
実際の睡眠時間のことではないんですね。
で、実際の睡眠時間についても、論文にしっかり書いてあるんですよね。
ただ、数字ではなくてグラフで示しています。

グラフなので正確なところまでは言えないんですが、一番上のグラフが8時間グループ、真ん中が6時間グループ、一番下が4時間グループなんですね。
8時間グループを見てもらうと、だいたい6時間30分から7時間ぐらい眠っている感じですね。
実験の最初の1週間ぐらいは、おそらく実験ということで緊張して、いまいち眠れなかったんだと思います。
なので、8時間グループというのは、睡眠時間で考えると、「6時間30分から7時間眠れたグループ」なんですね。
6時間グループは、だいたい5時間30分前後ぐらい眠れていますね。
4時間グループは、4時間よりも少し下がっているぐらいですね。
基本的には、ベッドにいる間ずっと眠り続けるというのはできないことなんです。
なぜなら、ベッドに着いた瞬間0秒で寝て、中途覚醒を一切せずに起きる、というのは基本的にはできないことだからですね。
なので、ベッド滞在時間よりも、本当の睡眠時間というのは短くなります。
「8時間グループのパフォーマンスがあまり下がらなかった」というところを見ると、少なくとも「6時間30分以上は寝た方がいいよね」までしか言えません。
「8時間睡眠がどうのこうの」なんてことは、まったく言えないわけですよね。
これは、睡眠の知識がかなりないと、「ベッド滞在時間の話なんだ」と気づけないんじゃないかなと思います。もちろん、実験の論文を見れば、すぐ気づけることではあるんですが。
なので、この記事を読んで誤解してしまうというのは、もう仕方がないですね。
なんか、人の先入観を使ってミスリードするミステリー小説のような感じですよね。
「睡眠時間」と書かれているからといって、その定義が本当の睡眠時間だと思うなよ、みたいな。
これは「睡眠時間」と書いているけれど、定義的には「ベッドの滞在時間」だぞ。「言葉ではなく定義が大事だぞ」みたいな感じですね。
大きな誤解③「6時間と4時間グループは3日徹夜と同じ」
この記事を読むと、「4時間グループと6時間グループは、3日間徹夜したのと同じぐらい成績が悪かった」と誤解しますよね。というか、まあ、そう書いてあるので、誤解というか、そう受け取ってしまいますよね。

この英語で書かれた部分は、論文から抜き出したものになってくるんですが、ここにしっかりと、「6時間グループは、8時間グループと4時間グループの中間だった」と書いているんですね。
つまり、「8時間>6時間>4時間>3日徹夜」
- 8時間グループは、パフォーマンスがそれほど下がらなかった
- 6時間グループは、8時間グループよりも下がった
- 4時間グループは、6時間グループよりもさらに下がった
- 3日間徹夜グループは、もっと下がった
という、当たり前の結果が出ているんですよね。
8時間グループでもパフォーマンスが少し下がっている理由としては、普段は8時間眠れている人たちなのに、実際の睡眠時間は6時間30分から7時間ぐらいしか眠れていないからです。
なので、8時間グループの人も、パフォーマンスが少し下がっているという結果になっているんですね。
で、これを徹夜グループと比較して考えていくと、認知機能の種類によっても変わってくるんですが、
だいたい、
- 6時間グループは、徹夜1日目と同じぐらいパフォーマンスが下がった
- 4時間グループは、徹夜2日目と同じぐらいパフォーマンスが下がった
という結果なんですね
ただ、これはむちゃくちゃ誤解を与える形にはなっているんですが、嘘はついていないんですよね。
なぜ嘘になっていないのかというと、記事で書いているのは、「6時間グループと4時間グループは、徹夜グループと同じぐらい成績が悪かった」という内容なんですね。
これって、実は本当なんです。
なぜ本当なのかというと、
- 6時間グループが2週間経った時の成績と、徹夜グループの1日目あたりの成績がほぼ同じ
- 4時間グループが2週間経った頃の成績と、徹夜グループの2日目あたりの成績がほぼ同じ
なので、ものすごくざっくり言うと、「6時間グループと4時間グループは、徹夜グループと同じぐらいパフォーマンスが下がっている」ともいえなくはないんですね。
このウーターソンさんは、おそらく論文をきちんと読んでいるんですね。
なので、嘘は書いていない。
タイトルでは、「6時間睡眠はパフォーマンスがすごく下がるよ、徹夜と同じぐらい下がるよ」と書いていたんですが、本文では「6時間未満の睡眠は」と書いているので、この人は「睡眠時間」ではなく、「ベッド滞在時間」であることもわかっているんですね。
ただ、とても誤解を広める内容にはなっていますね。
僕の好きなファンタジー小説に『スレイヤーズ』という作品があるんですが、そこに出てくる ゼロス というキャラクターが、同じような話し方をするんですよね。
嘘はついていないけれど、本当のことは全部言わず、相手に誤解を与えて、人の行動を誘導したり操作したりする、みたいなキャラクターなんです。
やっていることは、ある意味同じですね。
現代風に言うと、YouTubeの切り抜き動画とか、一部だけを切り取った記事で「嘘ではないけれど誤解を与えることで、再生回数や表示回数を稼ぐ」という手法ですね。
ちょっと社会問題化している雰囲気もありますが、それと同じ構造ですね、この記事は。
ただ、論理問題として見ると、ひっかけ問題として優秀な記事になっているんじゃないかなとは、正直思います。
なので、正直ちょっと読んでいて面白かったです。
この実験で重要なのは「睡眠不足が自己判断が難しいこと」を伝えていること
今回のペンシルベニア大学の実験でとても重要なところというのは、「何時間睡眠を取ったか」という話ではなくて、6時間グループと4時間グループで、2週間後の眠気の評価に差がなかった、というところなんですね。
つまり、睡眠を2時間削り続けたグループと、4時間削り続けたグループでは、
- 「眠いな」という感覚
- 「自分は集中力が下がっているかな」という感覚
このあたりに、あまり差がなかったんですね。
ただ、実際には4時間グループの方が、パフォーマンスはより下がっていったんです。
これは、「睡眠不足」というのは、2週間続いただけでも「慣れが生まれてしまう」ということですね。
慣れてしまうので、本当は全体的なパフォーマンスは下がっているんだけれども、本人は自覚できない。
ひょっとしたら、「8時間睡眠を取っている人と、そんなに変わらないんじゃないかな」と思ってしまう。
眠気についても、パフォーマンスについても、「ちょっと下がってるかな」ぐらいしか思わなくなってくる。
これが、慢性的な睡眠不足を生む仕組みにもなっているんですね。
なので、世の中には、「4時間睡眠でもパフォーマンスが高い」「睡眠不足でも俺はいつも通りだし」と言っている方がいらっしゃると思うんですが、
「自分で睡眠不足かどうか判断できない」というところが、睡眠不足におけるすごく大きな課題なんですね。
もちろん、1日〜2日ぐらいの睡眠不足であれば、「睡眠圧」という補う力が働くので、大きな問題はありません。
ただ、長期になればなるほど、やっぱりそれはマイナスに働きやすくなる。
しかも、本人が自覚できないことが問題として大きいんです。
そして、自覚できた時には、心身にかなり負担が来ている可能性が高い、ということですね。慣れを超えたレベルで、負担が来ているからです。
人には、このように「慣れ」というものがあります。
恐怖や不安を克服する、新しいことに慣れる、みたいなポジティブな意味の慣れもあるんですが、痛みや疲れ、睡眠不足に慣れることには、メリットとデメリットがあります。
例えば、肩こりとかもそうですね。
ものすごく肩がこっている人も、時間が経てば経つほど、肩の痛みやこりにを感じにくくなってくるんですね。もちろん、「動きにくい」とかはあったとしてもです。
これは、脳が途中から「痛み」や「違和感」を知らせる信号を弱くしてしまうんですね。慣れによって。
ただ、実際に人にマッサージしてもらったりすると、「ものすごい凝ってるね」って言われて、本人も驚いてしまう。
こんなふうに、「自覚症状がない慣れ」というものも、たくさんあるんです。
睡眠時間はどう考えれば良いのか?
睡眠不足を自己判断するのが難しいのであれば、どのように自分の睡眠時間を考えていけばいいのか、という話になってきます。
基本的には、「多くの人間にとって、どれだけの睡眠が大切なのか?」というところを基準にしながら、少しずつ自分なりに調整していく、という方法がおすすめです。つまり、科学ベースですね。
なので、基本的な睡眠の推奨時間というのが重要になってきます。
成人の場合であれば、7時間から9時間。
65歳以上であれば、7時間から8時間ですね。

そして、「許容時間」というものもあります。
これは、「理想ではないかもしれないが、日中の機能・健康・生活に大きな問題が出にくい範囲の睡眠時間」と言われている時間ですね。
成人の場合であれば、6~11時間。65歳以上の場合であれば、5~9時間ですね。
なので、「睡眠時間は7~9時間を目指していく。」
そして、6時間未満の人たちは、まず「6時間」という許容時間を目指していく。
そういうふうに、段階的に、少しずつ、安定的に睡眠時間を伸ばしていくということを、僕はおすすめしています。
睡眠時間をしっかり取ろうというメッセージ性は共感
今回のウーターソンさんの記事は、とても誤解を与えるものではあったんですが、「睡眠時間はしっかり取ろうね」というメッセージを伝えている、という点に関しては、僕も共感はします。
ただ、これだけ手段が間違っていると、不信感が働きやすくなるので、長期的な意味でいくと、ウーターソンさんの信頼が下がるだけじゃなくて、ペンシルベニア大学 の信頼も下がるし、睡眠情報を届けている人たち全体の信頼も下がりそうだなとは思いました。
もちろん、専門的知識や論文を一般向けに伝えていく上では、どうしてもズレというのは生まれてしまうので、仕方ない部分は確かにあります。
ただ、ここまで誤解が大きくなってしまうと、陰謀論の人たちが、自分たちの説を正当化するために、いろんなところから情報を切り貼りして抽出するやり方と、構造的には同じになってしまうんですね。
なので、科学を大切にするのであれば、やめた方がいいんじゃないかな、というのが僕の考えです。
基本的に、多少ズレていたとしても、その情報を得た人にとって実際に使える、実用性が高いのであれば、僕はいいと思っているんですね。
知識そのものよりも、「現実で役立つかどうか」が重要だと、僕は考えているからです。
ただ、今回の場合であれば、「8時間睡眠を取らないといけない」とか、「6時間睡眠はNG」という考え方が、睡眠においてはマイナスに働きやすい考え方になっています。
なので、メッセージ性としては、あまり良くないなと思いました。
しかも、実際に調べてみると、「実験も8時間睡眠取ってないやん」って話になってしまうので、信頼性も損なってしまう。
そういう意味でも、あらゆる面で良くないなと思いました。
では、どうして「8時間睡眠を取らなくちゃいけない」「6時間睡眠はNGだ」というメッセージがマイナスに働くのかというと、それは オルソムニア という不眠症状を引き起こす可能性が高まる考え方だからですね。
正しい睡眠を追い求めて不眠症になるオルソムニア
オルソムニアというのは、「正しい睡眠」を追い求めるがゆえに、不眠症になってしまうことです。
実際には、睡眠トラッカー(睡眠計測)を使って、完璧な睡眠を求めるあまり、不眠症になってしまう症状のことなんですね。
つまり、「正解の睡眠」「完璧な睡眠」を追い求めた結果、不眠症になってしまうということです。
なので、「6時間睡眠は徹夜と同じ」と言われると、
- 「6時間未満になってしまうと、すごくダメなんじゃないか」
- 「8時間を取らなくちゃいけない」
というふうに、“正解” が限定されすぎてしまう。
その結果、オルソムニアを誘発しやすくなってしまうので、個人的にはマイナスだと思っています。
そして、このオルソムニアというのは、通常の不眠症よりも悪化しやすい傾向があるんですね。
つまり、
- 不眠症が長続きしやすい
- 不眠症が重くなりやすい
という特徴があります。
これはなぜかというと、不眠症の大きな原因の1つに「睡眠努力」あるからです。睡眠努力とは、がんばって眠らなくちゃと考え行動することです。
「正しい睡眠を取らなきゃ」「完璧に眠らなきゃ」という考え方は、睡眠に対して非常にマイナスに働きます。
さらに「正解の睡眠を追い求めること」自体には疑問を持ちにくいので、そこから抜け出すのが難しいんですね。
正解は安心を与えてくれるので、疑うことが難しいからですね。
気づかないと、ずっとその状態が続いてしまうんです。
最後に:情報発信者が「どうして伝えているか?」を知るのが大事
ということで、今回の動画はどうだったでしょうか?
Yahoo!で記事が上がったぐらいなので、「YouTubeでも発信している人がいるのかな」と思って、ちょっと検索してみたんですが、3〜4年ほど前に、おそらくこの実験をもとにした内容で、「8時間睡眠がいいよ」と言っている人たちもいました。少ししか見てないんですが。
ただ、その人たちがどういう意図や方向性を持って伝えているのかというのは、正直わからないので、悪く言うつもりはないです。今回も、友人に向けて誤解を解くことが目的でした。
僕自身も間違えてしまうことはあるだろうし、うまく伝えきれていないところってあると思うんですね。
だからこそ僕は、「これをやった方がいいよ」とお伝えした後で、「なぜそれをやった方がいいのか」という理由をしっかり伝えることと、具体例をつけることを、とても意識しています。
理由と具体例をつけると、もし僕が間違っていた場合でも、見ている人がとても気づきやすいと思うんですよね。
「あれ? この理由、変じゃない?」とか、
「具体例を見ると、いまいち意味が通ってない気がするんだけど……」みたいな。
そうなると、おそらく見てくださる方も、僕にツッコミを入れやすいと思うんです。
ツッコミを入れられた時に、もし僕の伝え方が悪かったのであれば、「ここをもうちょっと伝えなくちゃいけないな」と改善できますし、
僕自身がよくわかっていないのであれば、そこで調べ直して、知識を高めて、よりうまく使える方法を伝えやすくなっていきます。
もちろん、「わかりやすく伝えるために、理由と具体例まで伝えている」という面もあるんですが、YouTubeでは、「いかにシンプルに、断定的に、刺激的に伝えるか」というところが重要だったりするので、本当はここまで言わなくてもいい、という部分も正直あるんですよね。
ただ、それだと僕としては面白くないので、やっぱりきちんと伝えたいな、という気持ちがあります。
今回の記事も、ウーターソンさんは、実験内容をしっかり理解していたとしか思えないんですよね。
情報の取り入れ方を見る限りでは。
でも、その上で、あえて誤解を与えやすい形にしている。
睡眠が大切だという話だけなら、この実験以外を使ってもいいはずなんですが、あえてこの実験をもとに話したというのは、
「6時間睡眠は、3日連続徹夜と同じぐらい認知機能が下がる」
というインパクトのある言葉を使って、認知度を広げたい、取り上げられたい、という思惑があったのかな、と。
もちろん、これはあくまで僕の邪推ですが、そういう面もあったのかなと思います。
ただ、それもウーターソンさんのビジネス上、大切なことなのであれば、それはそれでいいとも思うんですよね。
人がどう生きるかというのは、人それぞれなので。
ということで、今回の内容を通して、
- 睡眠への理解が深まること
- どういった情報を取り入れて、どういった情報を取り入れないかを考えること
- 情報発信には、発信者の何らかの思惑がある前提で考えること
このあたりが伝われば嬉しいです。
そして、その思惑がポジティブな場合もあれば、ネガティブな場合もあります。
ただ、それをポジティブと受け取るか、ネガティブと受け取るかも、個人の価値観によるところが大きいと思います。
なので、善悪で判断するというよりは、「自分に合っているかどうか」という視点で捉えていただければと思います。

