あなたはこんな体験をしていませんか?
時計を見ると23時。疲れとともに眠気がやってきて、体が重い。
「不眠症だけど、今日は眠れるかもしれない」と思って、いざベッドに入ると、なぜか目が覚めてしまう。
さっきまで眠かったのが嘘かのように、眠れる気配がない。
そして、「どうして眠れないんだ!」とイライラして、余計に眠れなくなってしまう…。
実はこれは私の体験談です。
でも、長く不眠症を患っている人の中には、「ベッドに入ると目が覚める体験」をしている人がいるのではないでしょうか?
今回はこのベッドに入ると目が覚める「条件付け不眠症」の解決方法をお伝えします。
条件付け不眠症は、ある習慣がきっかけになっており、不眠症が長期化する原因の1つです。
ただ、原因が明らかな不眠症です。しかも、解決方法はシンプル。
「ベッドに入ったら、そのまま眠ってしまう」体験をしたい方は、最後までお読みください。
条件付け不眠症の原因は「脳の条件反射で眠れなくなること」
条件付け不眠症とは、ある条件のもとだと、眠れなくなるという不眠症です。
今回であれば、「ベッドに入る」という条件で、眠れなくなっています。
なぜこのような厄介な症状が出るかというと、ベッドで眠れない体験を繰り返すうちに、脳が「ベッドは起きていていい場所」と間違った認識をしてしまうからです。
ではなぜ、脳が間違った認識をするようになるのでしょうか?
それはベッドで起きていることが多いからです。
例えば、
- ベッドの上でスマホを触ったり、テレビを見たりと、眠る以外の行動をする。
- 眠れないのにベッドに入り続けて、ベッドで起きている時間を増やしてしまう。
- ベッドの上で眠れないことにイライラしたり、不安なことを考えたりする。
このような体験を繰り返すと、脳は「ベッドは眠る場所」ではなく「ベッドは起きていていい場所」と認識していきます。イライラや不安を考えていることが多ければ、そもそもベッドはリラックスができない危険な場所と脳は錯覚してしまいます。この脳の錯覚を知らずに「睡眠に対する過剰な努力」を始めれば、精神生理性不眠症へと悪化していきます。
では、どうすればいいのでしょうか?
条件付け不眠症の解決方法は「ベッドは眠る場所と脳を再教育すること」
条件付け不眠症の解決方法はシンプルです。
脳が「ベッドは起きていていい場所」と勘違いしているのなら、「ベッドは眠る場所」と再教育すればいいんです。
つまり、「ベッドを眠る以外のことには使わない」というのが、条件付け不眠症を解決する方法です。
そして、その具体的な方法が刺激制御療法です。
条件付け不眠症を解決する「刺激制御療法」とは?
刺激制御療法とは、「ベッドを睡眠と性生活以外に使わない」という方法です。
刺激制御療法を使うことで、脳の認知を「ベッド=覚醒」から「ベッド=睡眠」と塗り替えることができます。私が29年間の不眠症を改善するときに、とても役立った睡眠療法の1つです。
刺激制御療法を使い始めて、「ベッドに入ると、そのまま眠ってしまう」という心地よい体験が得られるようになりました。
米国睡眠医学会(AASM)が慢性的な不眠症で推奨している解決法の1つでもあり、信頼感のある睡眠法です。また、スウェーデンの精神医学研究センターによる2023年のメタ分析で「寝つきに効果が高い」ことが分かっています。
では、刺激制御療法は具体的にどのようにすればいいのでしょうか?
刺激制御療法の7ステップ
刺激制御療法の7ステップ
①決めた「就寝時間」までベッドに入るのは禁止。休むときは座って休む。
②決めた「起床時間」にアラームをセット。起床時間を固定する。
③ベッドでは睡眠と性生活以外は何もしない。寝室はできる範囲で暗く静かに。
④ベッドに入ったあと、15~20分で入眠できなければ、ベッドから出る。
⑤ベッド以外でリラックスして過ごす。できれば寝室とは別の部屋で座って休む。
⑥眠れそうと思ったら、ベッドに戻って眠る。
⑦15~20分で入眠できなければ、「ベッド以外でリラックスして過ごす」と「眠れそうになったら、ベッドに戻って眠る」を繰り返す。
※基本的に、日中の仮眠は禁止。仮眠したい場合は15時までに20分以内の仮眠であればOK。
刺激制御療法の7ステップをきっちり守ろうとすると、逆に考えすぎてストレスがたまることがあります。基本は「ベッドでがんばって眠ろうとせずに、眠れないのであればベッドから出てリラックスして過ごす」を意識すればOKです。睡眠は正解・不正解の思考がマイナスに働くことも多いため、「正解と不正解の間を現実的に考えるグラデーションの考え方が重要」です。
刺激制御療法の効果を高める4つの方法
刺激制御療法は、条件付け不眠症の解決には最適な方法です。
でも、刺激制御療法をそのまま行ってうまくいく人もいれば、うまくいかない人もいます。
ちなみに、私は「うまくいかない人」でした。
刺激制御療法だけでは、うまくいかない場合、次の4つの方法を取り入れてみましょう。
1.リラックススキルを身に着ける
体が興奮したり、緊張したりしていれば、寝つくことは難しいです。
腹式呼吸や漸進的筋弛緩法や、マインドフルネスなどのリラックススキルを身に付けましょう。
根本的にリラックスが苦手な方は、マインドフルネスの考え方を知っておくのがおすすめです。
2.寝室の環境を整える
ベッドで眠るためには、寝室で眠りやすいことが大切です。
寝室は涼しく、暗く静かにすることが大切です。見落としがちなのは「涼しくする」ことですね。
寝具や体質にもよりますが、20~22度ほどの室温がおすすめです。20~22度を軸に自分に合う室温を探していきましょう。
3.午前中に太陽の光をしっかり浴びる
寝る前に眠気がしっかりくるように、午前中に太陽の光を20~30分は浴びておくのがおすすめです。
体内時計が早まることで、眠気が早くに訪れるようになり、寝つきがよくなります。
結果、刺激制御療法が行いやすくなります。
4.睡眠制限療法を行う
睡眠制限療法(Sleep Restriction Therapy)とは、眠る時間を意図的に制限して、睡眠の質と効率を高める方法です。睡眠効率85~90%を基準にして、睡眠の質を高めてから睡眠時間を伸ばす方法をとるため、睡眠効率療法と呼ぶこともあります。
不眠症の治療や改善に用いられる認知行動療法(CBT-I)の行動療法の核となっている方法です。
刺激制御療法の発展版とも言えるもので、睡眠の質と時間を向上する睡眠法です。睡眠制限は考え方を知っておくだけでも、睡眠改善や不眠症改善に役立ちます。
【47%不眠症を改善】睡眠制限療法の4つの安眠効果とは?―睡眠をコントロールする王道テクニック―
刺激制御療法の3つの注意点と対策法
①眠れずにベッドから出るときに、刺激のある活動をしてしまう
15~20分で眠れずベッド以外でリラックスして過ごすときに、リラックスではなく覚醒につながる行動をとると、より目が覚めて、より睡眠不足になる可能性があります。
一時的な睡眠不足は眠気が高まるため、それほど睡眠に影響を与えません。むしろ、眠気が高まるので翌日以降の刺激制御療法がうまくいきやすくなります。
ただ、日中に睡眠不足による事故のリスクが高い場合は、刺激制御療法を控えたほうが安全です。
もしも刺激制御療法を控える場合は、まずリラックス法を身につけてから、行うのがおすすめです。
私の場合も、はじめ刺激制御療法に取り組んだときはうまくいかず、腹式呼吸やマインドフルネスなどのリラックス法を身につけてから取り組みなおしました。
②刺激制御療法の時間を意識しすぎてストレスになる
「15~20分眠れないとベッドから出なければいけない!」と時間を強く意識しすぎてしまう人も、あまり向いていません。
時間を意識すると、脳が覚醒してベッドで眠りにくくなるので、「ベッドが起きて良い場所」と脳が間違った学習をするからです。
時間の意識を減らすためには、ベッドのまわりから時計やスマホを遠ざけるのがおすすめです。
時計やスマホを近くに置かなくなるだけで、刺激制御療法の成功率がグンとアップします。
③休むときにベッドから離れると強いストレスを感じる
刺激制御療法の最大のポイントは「睡眠と性生活以外では使わない=目覚めているときにはベッドを使わない」ことです。
普段、ベッドで休む習慣をつけている方は、刺激制御療法に強いストレスを感じることがあります。
その場合は、ベッド以外に休める場所を用意するのがおすすめです。
休む用の椅子を用意する。ラグやカーペットを敷いて床で休めるようにする方法があります。
私の場合は、日中休むときはヨガマットで休むようにしています。
参考動画:ベッドに入るとストンと眠れる睡眠脳が育つ方法。―条件反射で眠る刺激制御療法―
条件付け不眠症のまとめ
- 条件付け不眠症とは、ベッドに入ると目が覚めてしまう不眠症のこと。
- 原因は脳が「ベッドは起きていていい場所」と間違った認識をしてしまうこと。
- 解決法はベッドを眠る以外に使わないこと。
- 具体的には「刺激制御療法」を行うこと。他にも、睡眠効率療法、リラックス、寝室環境を整える、午前に太陽の光を浴びることで、条件付け不眠症を解決しやすくなります。