トゥーレット症は、主に小児期に発症する神経発達障害で、複数の運動チックと少なくとも一つの音声チックが見られることが特徴です。この症状は、日常生活に支障をきたすことが多く、本人にとっても周囲にとっても大きなストレスになる場合があります。トゥーレット症の症状には、一時的な運動や音声のチック、体の動きのコントロールが難しい反復的な行動などが含まれます。
この記事では、トゥーレット症の具体的な症状や原因、治療法について詳しく解説し、患者やその家族、友人が抱える課題や支援の方法についても紹介します。
野上しもん
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トゥーレット症の主な症状
トゥーレット症の症状は、主に「運動チック」と「音声チック」に分類されます。
1. 運動チック
運動チックは、顔や手足など体の一部が自分の意思に反して動く症状です。多くの場合、顔の筋肉の動きや肩をすくめるといった軽い動作から始まりますが、成長と共に動作が複雑化し、大きな動きが見られることもあります。
運動チックの具体例
- 瞬きを頻繁にする
- 頭や首を振る
- 肩をすくめる
- 腕や足を振る
2. 音声チック
音声チックは、声を出すことに関わるチック症状で、咳払い、叫び声、特定の単語やフレーズを繰り返すなどが見られます。音声チックは、運動チックと組み合わさって現れることが多く、一般的に成長と共に症状が目立ち始めます。
音声チックの具体例
- 咳払いや喉を鳴らす音
- 叫び声や不規則な音を出す
- 汚言症(周囲に不快感を与える言葉を繰り返す症状)
3. チックの頻度と変動
トゥーレット症のチック症状は、状況や体調、感情に応じて変動します。ストレスや緊張が増すとチックが強くなり、リラックスしていると軽減することがあります。また、同じ人でも日によって症状の重さが異なります。
トゥーレット症の原因
トゥーレット症の原因は、完全には解明されていませんが、遺伝的要因と環境的要因の両方が関与していると考えられています。
1. 遺伝的要因
研究では、トゥーレット症が家族内で発生することが多く、遺伝的な要素が関わっているとされています。特定の遺伝子が関与している可能性が示唆されていますが、正確なメカニズムはまだ不明です。
2. 神経化学的要因
トゥーレット症は、脳内の神経伝達物質であるドーパミンやセロトニンが関係していると考えられています。これらの神経伝達物質が正常に機能しないと、運動や行動を調整する脳の仕組みに影響が生じ、チック症状が発生するとされています。
3. 環境的要因
ストレス、感染症、生活習慣の変化などが、症状を悪化させる要因となることがあります。また、周囲の反応や社会的なプレッシャーも、チックの頻度や強さに影響を与える場合があります。
トゥーレット症の診断方法
トゥーレット症の診断には、DSM-5(アメリカ精神医学会の診断基準)に基づいて、以下のような基準が用いられます。
- 複数の運動チックと少なくとも1つの音声チックが1年以上続く
- 症状が1日に何度も現れるが、その頻度や強さは変動する
- 他の疾患(てんかんや脳障害など)によって説明できない
診断は、主に精神科や神経内科で行われ、家族の病歴や患者の行動履歴も考慮されます。診断に当たっては、周囲のサポートや理解が欠かせません。
トゥーレット症の治療法
トゥーレット症の治療には、主に行動療法と薬物療法が用いられます。
1. 行動療法
習慣逆転トレーニング(HRT)
習慣逆転トレーニング(Habit Reversal Training: HRT) は、トゥーレット症におけるチック症状の改善に効果的な行動療法の一つです。HRTでは、チックの兆候を認識し、その代わりに別の動作を行うことでチックを抑えることを目指します。
曝露反応妨害(ERP)
曝露反応妨害(Exposure and Response Prevention: ERP) は、チックを引き起こす要因や環境に順応し、チックを抑制する方法です。あえてチックの引き金となる状況に身を置き、チックの発生を抑える練習を行います。
2. 薬物療法
薬物療法は、チック症状が日常生活に大きな支障をきたしている場合に用いられます。ドーパミン受容体を抑える薬や抗不安薬などが処方されることが多いです。ただし、薬の副作用もあるため、治療は慎重に進める必要があります。
主な薬
- 抗精神病薬:リスペリドンやアリピプラゾールなど
- 鎮静剤:チックの発生頻度を下げるために使用されることがある
トゥーレット症への理解と支援の重要性
1. 社会的理解とサポート
トゥーレット症は周囲から誤解されやすく、症状が原因で不適切な対応をされることがあります。特に子供の頃から症状が出るため、学校や職場での理解が重要です。学校では特別支援教育が行われ、家庭や職場では温かいサポートが必要です。
2. 家族の役割
トゥーレット症患者にとって、家族の理解と支援が症状の緩和に大きく影響します。家族が症状について正しく理解し、ストレスを軽減するサポートを提供することで、本人の生活の質が向上します。
3. 学校や職場での対応
学校や職場では、トゥーレット症患者に対する適切な配慮が求められます。チックが出ることに対する理解があると、本人のストレスが減り、症状の緩和にも繋がります。教師や同僚に対する教育も、患者への理解を促すために重要です。
トゥーレット症患者に対する効果的なコミュニケーション方法
トゥーレット症患者とのコミュニケーションにおいては、以下のポイントを意識することが重要です。
1. チックを注意しない
チック行動は無意識に行われるものであり、本人が意図的にコントロールすることが難しいため、注意や指摘はかえってストレスを増やし、症状を悪化させる可能性があります。
2. 自然な関わり方を心がける
特別扱いすることなく、普段通りに接することが望ましいです。相手のことを理解しつつ、自然な関わりを心がけることで、本人もリラックスしやすくなります。
3. 症状についての知識を持つ
トゥーレット症の症状や治療法について理解を深めることで、患者に対する偏見や誤解が解消され、より良いサポートができるようになります。
まとめ:トゥーレット症の正しい理解と支援の大切さ
トゥーレット症は、複数のチック症状によって日常生活に様々な影響を及ぼしますが、適切な治療や周囲の理解があれば、本人も周囲も快適に生活を送ることが可能です。習慣逆転トレーニングや薬物療法などの治療法もあり、症状に応じた対応が可能です。また、社会全体がトゥーレット症への理解を深め、適切なサポートを提供することで、患者の生活の質が向上し、共生社会の実現に寄与します。
トゥーレット症の理解と支援が広がることにより、患者やその家族がより安心して生活できる環境が整備されることを願っています。
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