人々の価値観は、生活の選択や行動、仕事に対する姿勢、他者との関わり方にまで影響を与えます。これらの価値観を体系的に理解するための有名な理論が「シュワルツ価値観理論(Schwartz’s Theory of Basic Human Values)」です。この理論では、人間の価値観を10の基本的な領域に分類し、異なる価値観がどのように人々の行動や思考に影響するかを説明します。
本記事では、シュワルツ価値観理論の概要、10の基本的な価値観、各価値観の特徴や応用について詳しく解説します。
野上しもん
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シュワルツ価値観理論とは?
シュワルツ価値観理論は、心理学者のシェロム・シュワルツ(Shalom Schwartz)によって提唱された理論で、人間の価値観を体系的に分類し、行動や意識にどのように影響するかを探るためのものです。この理論の基本的な前提は、人間には普遍的な10種類の基本的価値観があり、それぞれが異なる目標や動機を反映しているというものです。
シュワルツの研究によると、価値観は文化を超えて共通するものであり、それぞれが個人の行動や人生の選択に深く関与しています。この理論は、ビジネスや教育、心理学の分野で幅広く応用されており、個人の価値観を理解するための指標として非常に有用です。
シュワルツの10の基本的価値観
シュワルツは、人間の価値観を以下の10の領域に分類しました。各価値観には、特定の目標や動機が反映されており、個人がどの価値観を重視するかによって、行動や態度が変わると考えられています。
1. 自律(Self-Direction)
自律は、自由で創造的な自己表現や独自の価値観に基づいた行動を重視する価値観です。自律が高い人は、自分自身の考えや判断に基づいて意思決定を行い、新しいアイデアや挑戦を好む傾向があります。
- 例:自由な発想を重視するアーティストや、創造的なプロジェクトに取り組む研究者。
2. 刺激(Stimulation)
刺激は、変化や新しい経験、冒険を求める価値観です。刺激が高い人は、日常に新鮮さを求め、退屈を嫌い、変化のある生活を好みます。
- 例:冒険旅行やスポーツ活動に積極的な人、リスクを恐れない企業家。
3. 享楽(Hedonism)
享楽は、喜びや快楽、充実した生活を追求する価値観です。享楽を重視する人は、自分が楽しいと感じることや幸福感を大切にします。
- 例:趣味や遊びに積極的で、人生を楽しむことを優先する人。
4. 成功(Achievement)
成功は、他人からの評価や社会的地位、自己の達成感を求める価値観です。成功志向の人は、目標を達成し、他者に認められることを重視します。
- 例:高い目標を掲げ、成果を上げることに力を入れるビジネスパーソンやアスリート。
5. 権力(Power)
権力は、社会的な影響力や地位を持ち、他者や社会に影響を与える価値観です。権力志向の人は、リーダーシップや影響力を発揮することに重きを置きます。
- 例:組織のリーダーや管理職、社会的地位を求める人。
6. 安全(Security)
安全は、個人の安全や社会全体の安定を求める価値観です。安全を重視する人は、予測可能で安定した生活環境を望み、リスクを回避しようとする傾向があります。
- 例:安定した職業を選ぶ人、秩序や安全を守るために働く人。
7. 適応(Conformity)
適応は、他者の期待に応え、規範を守る価値観です。適応を重視する人は、周囲と調和を保ち、規則を遵守することを重要視します。
- 例:伝統を重んじる人や、集団のルールに従うことが多い人。
8. 伝統(Tradition)
伝統は、文化や宗教、歴史的な価値観に基づく行動を重視する価値観です。伝統を大切にする人は、先祖や文化の教えを尊重し、それに従おうとします。
- 例:家族の伝統を守り続ける人や、宗教的な儀式を重んじる人。
9. 善意(Benevolence)
善意は、他者への思いやりや助け合いを重視する価値観です。善意が高い人は、身近な人や社会全体の幸福を大切にします。
- 例:ボランティア活動に参加する人や、家族や友人を大切にする人。
10. 普遍主義(Universalism)
普遍主義は、すべての人や自然に対する平等と公正を重視する価値観です。普遍主義が高い人は、環境問題や人権問題に対して積極的に取り組みます。
- 例:平和活動や環境保護活動に携わる人、人種や文化を超えて他者を受け入れる人。
シュワルツ価値観理論の応用
シュワルツ価値観理論は、ビジネス、教育、マーケティングなど幅広い分野で応用されています。以下はその一例です。
1. ビジネスとリーダーシップ
ビジネスの分野では、リーダーシップスタイルやチームマネジメントにおいてシュワルツ価値観理論が活用されています。たとえば、権力や成功を重視するリーダーは、目標達成に向けて積極的に行動するため、競争力を高めるチームを築くことが期待されます。一方、善意や普遍主義の価値観を持つリーダーは、チーム内での調和や平等を重視し、サポート的なリーダーシップを発揮する傾向にあります。
2. マーケティングと顧客分析
シュワルツの価値観分類は、マーケティング戦略の構築やターゲット層の分析に役立ちます。たとえば、商品やサービスの訴求ポイントを、「成功」や「権力」にフォーカスすることで、自己実現やステータスを重視する層に訴求することが可能です。また、「善意」や「普遍主義」をアピールすることで、環境問題に関心のある消費者層にリーチすることも可能です。
3. 教育とキャリア支援
教育の現場では、シュワルツ価値観理論がキャリア支援や個人の適性分析に用いられています。たとえば、自律や刺激を重視する学生には創造的なキャリアパスを提案する一方、安定を求める学生にはリスクの少ない職業を勧めることができます。価値観に応じたキャリア支援を行うことで、個人がより自分に合った進路を見つけやすくなります。
4. 異文化理解と国際交流
シュワルツ価値観理論は、異文化理解や国際関係にも応用されています。たとえば、異なる文化や宗教を持つ国々では、価値観の優先順位が異なるため、価値観を理解することで摩擦を減らし、効果的なコミュニケーションが可能になります。普遍主義や善意を重視する国際的な組織においては、異なる価値観を持つ個人が協力しやすい環境を作るための指針としても役立っています。
まとめ:シュワルツ価値観理論で人間の行動や選択を深く理解しよう
シュワルツ価値観理論は、人々の行動や選択が、基本的な価値観に基づいていることを示し、価値観が異なる人々の理解に役立つ理論です。この理論を活用することで、他者との違いを尊重し、より良い人間関係を築くことが可能になります。仕事や教育、マーケティング、異文化交流など様々な分野で応用できるため、日常生活においてもシュワルツ価値観理論を活かして、より豊かな人間関係を築きましょう。