突然、息が苦しくなり、胸が締め付けられるような感覚や動悸、めまいに襲われたことはありませんか?
「このまま息ができなくなるのではないか」
「心臓の病気かもしれない」
「倒れてしまうのではないか」
そんな強い不安を感じることもあるかもしれません。
しかし、その症状は過換気症候群かもしれません。
過換気症候群は、不安や緊張、ストレスなどをきっかけに呼吸が速くなり、体内の二酸化炭素が減りすぎることで起こる状態です。実際には酸素不足ではないことが多いにもかかわらず、息苦しさや動悸、しびれなどのつらい症状が現れるため、さらに不安が強まり、症状が悪化する悪循環に陥ることがあります。
一方で、過換気症候群の仕組みや対処法を知っておくことで、落ち着いて対応しやすくなることも少なくありません。
過換気症候群とは?
過換気症候群とは、必要以上に速く深く呼吸をしてしまうことで、体内の二酸化炭素が過剰に減少し、さまざまな症状が現れる状態です。
過換気症候群は、しばしば不安や緊張、ストレス、パニック発作などをきっかけに起こります。これは精神的な問題だけでなく、呼吸器疾患や心疾患などが原因で起こることもあります。
過換気症候群の主な7つの症状
①息苦しさ、呼吸が速くなる
過換気症候群で最もよくみられる症状です。
実際には十分な酸素を取り込めていることが多いのですが、「息が吸えていない気がする」「もっと深く呼吸しなければ」という感覚になり、呼吸が速くなったり深くなったりします。
その結果、さらに二酸化炭素が減少し、症状が強まる悪循環に陥ることがあります。
②胸の圧迫感や胸痛
胸が締め付けられるような感覚や、胸の痛み・違和感が現れることがあります。
症状によっては心臓の病気と勘違いすることもあり、「何か重大な病気ではないか」という不安がさらに強くなることがあります。
➂動悸
心臓がドキドキしたり、脈が速くなったりすることがあります。
動悸そのものが危険な状態とは限りませんが、「心臓がおかしいのでは」と不安になり、さらに緊張が高まって過呼吸が続いてしまうことがあります。
④めまい、ふらつき
血液中の二酸化炭素が減ることで脳の血管が収縮し、一時的に脳への血流が低下しやすくなります。
そのため、頭がぼーっとしたり、めまいやふらつきを感じたりすることがあります。
⑤手足や口の周りのしびれ
過換気によって血液がアルカリ性に傾くと、神経が過敏になります。
その結果、手足や口の周りにピリピリとしたしびれや違和感を感じることがあります。
⑥手指がこわばる(手足のけいれん)
症状が強くなると、手や指に力が入り、こわばった状態になることがあります。
場合によっては手足がけいれんすることもあり、「体がおかしくなったのではないか」と強い不安につながることがあります。
⑦不安感や恐怖感
過換気症候群では身体症状だけでなく、強い不安や恐怖を感じることもあります。
「このまま息ができなくなるのではないか」「倒れてしまうのではないか」と感じることがあり、その不安によってさらに呼吸が速くなり、症状が悪化することがあります。
症状が悪化する悪循環
過換気症候群では、
不安や緊張
↓
呼吸が速くなる
↓
二酸化炭素が減る
↓
息苦しさ・動悸・しびれなどの症状が出る
↓
さらに不安になる
↓
もっと呼吸が速くなる
という悪循環が起こりやすいのが特徴です。
過換気症候群が起きる仕組み
過換気症候群では、不安や緊張などをきっかけに、呼吸が必要以上に速く・深くなります。
すると、体の中から二酸化炭素が出ていきすぎて、血液中の二酸化炭素が少なくなります。
二酸化炭素は「いらないもの」というイメージがありますが、実は血液の酸性・アルカリ性のバランスを保つために必要です。
二酸化炭素が減りすぎると、血液がアルカリ性に傾きます。
その結果、神経や筋肉が過敏になりやすくなり、
- 手足のしびれ
- 口の周りのしびれ
- めまい
- ふらつき
- 手指のこわばり
- けいれん
- 動悸
- 息苦しさ
などの症状が現れます。
また、血液中の二酸化炭素が減ると脳の血管が収縮しやすくなるため、めまいや頭がぼーっとする感覚が出ることもあります。
つまり過換気症候群は、「息が足りない状態」ではなく、呼吸をしすぎて二酸化炭素が減りすぎた結果、体のバランスが崩れてさまざまな症状が現れる状態です。
過換気症候群が起きる原因は?
①パニック発作
突然の強い不安や恐怖とともに発症するパニック発作では、過換気症候群が起こることがあります。
「息ができない」「このまま倒れるのではないか」と感じることで呼吸がさらに速くなり、症状が悪化しやすくなります。
②強い感情の変化
不安だけでなく、
- 怒り
- 興奮
- ショック
- 悲しみ
などの強い感情がきっかけになることもあります。精神的な負荷によって呼吸が乱れ、過換気につながる場合があります。
➂痛み
強い痛みを感じたときに呼吸が速くなり、過換気症候群が起こることがあります。
けがや病気による急な痛みがきっかけになることもあります。
④激しい運動
運動中は呼吸が増えるのが正常です。
ただし、運動後も過度な呼吸が続いたり、呼吸が乱れたりすると、過換気症候群に似た症状が現れることがあります。
⑤呼吸器や心臓の病気
以下のような病気によって呼吸が速くなり、結果として過換気状態になることがあります。
- 気管支喘息
- 肺炎
- 心不全
この場合は単なる過換気症候群ではなく、まず原因となる病気の治療が重要になります。
⑥カフェインなどの刺激物
コーヒーやエナジードリンクなどに含まれるカフェインを大量に摂取すると、動悸や不安感が強まり、呼吸が速くなることがあります。人によっては過換気症候群の引き金になることがあります。
⑦疲労や睡眠不足
心身が疲れているとストレスへの耐性が低下し、不安や緊張が強まりやすくなります。
その結果、呼吸が乱れやすくなり、過換気症候群が起こることがあります。
過換気症候群は、「不安やストレスによるもの」が最も多いものの、それだけが原因ではありません。」不安や緊張、パニック発作、強い感情、痛み、疲労、睡眠不足、さらには呼吸器や心臓の病気など、さまざまな要因によって呼吸が速くなり、体内の二酸化炭素が減少することで起こります。
過換気症候群の対処法
過換気症候群が起きたときは、まず「命に関わる状態ではないことが多い」と理解し、慌てずに呼吸を落ち着かせることが大切です。
ただし、初めて起きた場合や、胸痛・意識障害・強い息苦しさがある場合は、別の病気の可能性もあるため医療機関に相談してください。
①まず安全な場所に移動する
発作中は、めまいやふらつきが出ることがあります。
立ったままだと転倒する危険があるため、まずは安全な場所に座ります。
可能であれば、壁にもたれたり、椅子に座ったりして、体を安定させます。
②「息を吸う」より「吐く」を意識する
過換気症候群では、「息が吸えない」と感じやすいですが、実際には呼吸をしすぎている状態です。
そのため、無理に大きく息を吸おうとすると、さらに二酸化炭素が減って症状が強くなることがあります。大切なのは、吸うことよりも、ゆっくり吐くことです。
➂呼吸をゆっくり整える
呼吸は、できるだけ小さく、ゆっくり行います。
例としては、
鼻から軽く吸う
↓
口から細く長く吐く
という呼吸です。
「たくさん吸う」のではなく、少し吸って、長めに吐くイメージです。吐く時間を吸う時間より長くすると、呼吸が落ち着きやすくなります。
④体の力を抜く
過換気が起きると、肩や首、胸まわりに力が入りやすくなります。
その緊張によって、さらに呼吸が浅く速くなることがあります。
肩を少し下げる、手の力を抜く、奥歯の噛みしめをゆるめるなど、体の力を抜く意識を持つと呼吸も落ち着きやすくなります。
⑤「今は過換気の反応」と言葉にする
発作中は、「このまま倒れるのではないか」「息が止まるのではないか」と感じやすくなります。
その不安がさらに呼吸を速くしてしまいます。
そのため、心の中で、
「これは過換気の反応」
「呼吸を整えれば落ち着いていく」
「今はゆっくり吐けばいい」
と確認することが役立ちます。
⑥周囲の人ができる対応
周囲の人は、本人を急かさず、落ち着いた声で話しかけます。
「大丈夫、ゆっくり吐いていきましょう」
「座って、肩の力を抜きましょう」
「少しずつ落ち着いていきます」
というように、安心できる言葉をかけます。
逆に、「落ち着いて!」と強く言ったり、人が集まりすぎたりすると、本人の不安が強くなることがあります。
⑦紙袋を使った呼吸は避ける:ペーパーバック法
以前は、紙袋を口に当てて呼吸する方法が使われることがありました。
しかし現在は、酸素不足を招く危険があるため、基本的にはおすすめされません。
特に、心臓や肺の病気が隠れている場合、紙袋呼吸は危険になることがあります。
ペーパーバッグ法とは?
ペーパーバッグ法とは、紙袋を口や鼻に当てて呼吸を行う方法です。過去には、過換気症候群の対処法として広く使われていました。ただ、「本当に過換気症候群とは限らない」「二酸化炭素を戻しすぎて酸素が不足する可能性」などから非推奨です。※お医者さんに相談
受診した方がよい場合
次のような場合は、過換気症候群と決めつけず、医療機関に相談してください。
- 初めて症状が出た
- 胸の痛みが強い
- 意識がぼんやりする
- 呼吸困難が強い
- 失神しそうになる
- 発作を何度も繰り返す
- 心臓や肺の病気がある
- 症状が長く続く
過呼吸と過換気症候群の違い
| 項目 | 過呼吸 | 過換気症候群 |
|---|---|---|
| 意味 | 必要以上に速く・深く呼吸している状態 | 過呼吸によって症状が現れている状態 |
| 分類 | 症状・呼吸の状態 | 症候群(診断名) |
| 二酸化炭素 | 減少することがある | 減少していることが多い |
| 主な症状 | 呼吸が速い、呼吸が深い | 息苦しさ、動悸、めまい、しびれ、手足のけいれん、不安感など |
| 原因 | 運動、発熱、不安、肺や心臓の病気など | 不安やストレス、パニック発作などが多い |
| 治療の対象 | 呼吸が速くなっている原因を探す | 症状の改善と原因への対処を行う |
| 日常会話での使われ方 | 過換気症候群とほぼ同じ意味で使われることが多い | 過呼吸とほぼ同じ意味で使われることが多い |
