「体育の授業でもっと効果的な体力トレーニングができないか?」
──そんな問いに応える研究が、ドイツで行われました。対象は中学生、テーマは「高強度インターバルトレーニング(HIIT)」です。
限られた時間・設備の中で、持久力や筋力を効率よく高めるにはどうすればいいのか?
本研究では、3種類のHIIT(4×4分、12×1分、全身を使ったサーキット形式)を6週間実施し、それぞれの効果を比較。
結果として、全ての形式で持久力の改善が確認され、特にサーキット形式は筋力の幅広い向上にもつながることが明らかになりました。
学校現場でも導入可能な運動法として、HIITの可能性がますます注目されています。
参考:さまざまな種類の高強度インターバルトレーニング(HIIT)が小児および青年の持久力および筋力パラメータに与える影響
【研究や論文は、chatGPTに著作権に配慮して、要点をまとめてもらっています。緑のメモは僕の意見・感想です】
結論
HIIT(高強度インターバルトレーニング)は、限られた時間の中で効率的に体力を向上させるトレーニング手法として注目されています。
本研究では、全てのHIIT形式が生徒の有酸素持久力を大幅に改善することが確認されました。
特に、全身を使った「サーキットトレーニング形式」のHIITは、持久力の向上に加え、筋力に関する複数のテスト項目でも明確な改善が見られました。
この結果は、学校の体育授業という限られた時間や設備の中でも、子どもたちの健康や体力向上を図るうえで、サーキット形式のHIITが非常に有効な手段となる可能性を示しています。今後、教育現場での導入がさらに期待される運動方法です。
「サーキット形式のHIIT」とは、全身を使った様々な種目を連続的に行う高強度インターバルトレーニングのことです。通常のHIITがランニングやバイクなどの単一の動きを繰り返すのに対し、サーキット形式では以下のような筋力・持久力・敏捷性を高める多種目運動を組み合わせます
内容の信頼性:10点満点中9点
- 被験者数:121名と比較的多い
- ランダム化比較試験を実施
- 実施期間も6週間と適切
- 研究は倫理規定に準拠
- 学校現場という現実的な環境で実施
- ただし、対照群の欠如や心拍数の管理に制限あり
何の研究か?
中学校の体育の授業において、3種類のHIIT(4×4分、12×1分、全身運動を用いたサーキット形式)を6週間導入し、持久力と筋力の向上効果を比較した研究。
研究した理由は?
世界的に子どもたちの運動不足が問題になっており、ドイツでも男子の17%、女子の10%しか十分に運動していない現状があります。
限られた時間・設備で効率的に体力を伸ばす手段として、HIITの有効性を検証する必要があったためです。
結果はどうだったか?
全グループで持久力が大幅に向上(最大有酸素速度9〜12%増)
この研究では、3つの異なる形式のHIIT(①4分×4回、②1分×12回、③サーキット形式)を、週2回・6週間にわたり中学生に実施しました。その結果、すべてのグループで最大有酸素速度(MAS: Maximum Aerobic Speed)が平均9〜12%も向上しました。
最大有酸素速度とは、心肺機能の指標となる数値であり、これが上がるということは、より効率よく酸素を使って運動ができるようになる=持久力が向上したことを意味します。
- 4×4分HIIT:9.1%向上
- 12×1分HIIT:12.1%向上
- サーキットHIIT:9.4%向上
このように、どの形式のトレーニングでも持久力向上に有効であることが示されました。
最大有酸素速度は「酸素を最大限に使って運動できるスピード(速さ)」のことです。この研究だけを見ると、マラソンみたいな持久力系は12×1分HIITのほうが有望なのかな。
サーキット形式のHIITは筋力テスト4種すべてで有意な改善
サーキット形式のHIITでは、腕立て伏せ、腹筋、立ち幅跳び、横方向ジャンプという4つの筋力テストすべてにおいて、統計的に有意なパフォーマンス向上が確認されました。
この形式では全身の筋肉をバランスよく使う運動が多く含まれており、持久力だけでなく筋力・筋持久力・瞬発力・体幹の安定性など、幅広い能力を同時に鍛えることができます。その結果、筋力に関する総合的な効果が現れたと考えられます。
サーキット形式なんだから、そりゃそうでしょう。という感じですよね。
ランニング中心のHIIT(4×4分、12×1分)では筋力の改善が限定的
一方、ランニングを中心に行ったHIITグループでは、一部の筋力テストでしか有意な改善は見られませんでした。
- 4×4分HIIT:腹筋のみ改善
- 12×1分HIIT:腕立て伏せと横跳びで改善
これは、ランニングが主に下半身の持久的な筋肉や心肺機能に特化した運動であるため、腕や体幹、瞬発的な筋力を鍛える刺激が少なかったためと考えられます。
これ面白いですね。4×4の場合の腹筋改善は、おそらく4分間という長い間の高強度運動なので腹筋を固める時間が長かったんでしょうね。12×1は、短時間のより高強度なので、肩振りやランニングスピード上昇で、腕立て伏せと横跳びが改善したと考えられますね。
運動能力が高い生徒ほど高い効果と満足度を示す一方で、運動が苦手な生徒は支援が必要
調査では、生徒たち自身が自分を「運動が得意」と感じているか、「苦手」と感じているかを自己評価し、トレーニングへの満足度や達成感を記録しました。
- 「運動能力が高い」と答えた生徒は、トレーニングの強度にもよく対応し、成果も高く、満足度も高いという結果が出ました。
- 一方で、「運動が苦手」と答えた生徒は、求められる強度に達するのが難しく、疲労感は高くても効果が出にくい傾向がありました。
これは、HIITが本来かなり高い強度で実施されるため、運動初心者には心理的・身体的な壁になることもあることを意味しています。こうした生徒には、運動内容を調整したり、段階的に強度を上げるサポートが必要です。
HIITは興奮度があるので楽しい部分もありますが、運動が苦手な人にとって「息苦しさと強い疲労感で動き続ける」のはしんどいですよね。