「まだ、夜中か…」
目が覚めると、部屋が暗くて、カーテンからも光が射し込んでいない。
時計を見るまでもなく、まだ朝まで時間が長いことが分かり、嫌な気分になる。
毎日、夜中目覚めずに朝までぐっすり眠りたい。
中途覚醒がなくなって、睡眠を良くしたい。
夜中目覚めずに、朝までぐっすり眠れることが良い睡眠だと、このときは思っていました。
ただ実際にはそんなことはありません。
毎日、中途覚醒がない睡眠は、悪い睡眠である可能性があります。
しかも、中途覚醒をゼロにしたいという完璧主義的な考え方が、睡眠を悪化させて中途覚醒につながりやすくなる原因にもなります。
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野上しもん
・29年間の睡眠障害を克服
・5年以上の双極性障害とうつを克服
・上級睡眠健康指導士
・メンタル心理カウンセラー
・食生活アドバイザー
・YouTube「メンタルコーチしもん」登録数1.3万
著書
・眠れない理由を知って眠れる方法を知れば安眠
・脱・中途覚醒 “夜中に目覚める”悩みが消える
・12歳になるまでに読みたい 「子どもの睡眠」
睡眠が整っている人の方が中途覚醒をしやすい?
睡眠の面白い調査があります。
国立精神・神経医療研究センターが2012年に362人の学生を対象にある調査をしました。
3つのグループに分けて、睡眠の状態を調査したんです。
①睡眠が整っているグループ
・5年間アラームなどを使わずに、自然に朝目覚めたグループ。
・起床・就寝時間はともに早い傾向がある。
・平均睡眠時間は約7時間11分
②睡眠が整っていないグループ
・5年間アラームなどを使って、外部のサポートを借りて起きたグループ。
・起床時間と就寝時間はともに遅い傾向がある。
・平均睡眠時間は約6時間50分。
③混ざり合っているグループ
・平均睡眠時間は、約7時間。
※実際には、この調査は、朝に自然と目覚める自己覚醒の調査をしている。
睡眠時間と朝の目覚めが良いのは「①睡眠が整っているグループ」です。
では、中途覚醒はどうだったのか?というと。
①睡眠が整っているグループ:平均0.66
②睡眠が整っていないグループ:平均0.18
③混ざり合っているグループ:平均0.32
以上のように、「①睡眠が整っているグループ」は、「②睡眠が整っていないグループ」に比べて、3.67倍も中途覚醒をしています。
これは一例にすぎませんが、このように睡眠時間がしっかりとれているほうが中途覚醒はしやすくなることがあります。
なぜ睡眠時間がしっかり取れている方が、中途覚醒が3.67倍も多かったのでしょうか?
通常、人は夜中に複数回 短い中途覚醒をする
人は夜中に複数回、中途覚醒をするものです。
ただ、中途覚醒の記憶がないことも多く、「朝までぐっすり眠れた」という体験になることがあります。
でも、神経質の傾向があったり、中途覚醒に強いストレスを感じていたりすると、中途覚醒したことの記憶が残り、結果的に眠りが浅かったと思い込みやすくはなります。
先ほどの調査の場合、睡眠が整っているグループは、通常の睡眠になるので、中途覚醒は自然なレベルであります。
調査が自己申告なので、中途覚醒があった中でも覚えていない場合もあり、実際の中途覚醒の回数はもっと多かったと考えられます。
睡眠リズムが崩れることによって、中途覚醒が減ることもあります。
ただ、睡眠リズムの崩れの場合は、どちらかというと悪夢を見やすくなったり、中途覚醒をしやすくなったりする場合のほうが多いとは思います。
先ほどの睡眠が整っていないグループであれば、睡眠時間が短かったので、睡眠負債がたまっていたので中途覚醒が減っていたのかもしれません。
睡眠負債とは睡眠版の借金みたいなものですが、睡眠不足になることで眠れる力である睡眠圧が高まって、中途覚醒が減りやすくなります。
つまり、中途覚醒をしない睡眠が、最適な睡眠とは限りません。
今回のように、睡眠不足によって中途覚醒をしなくなっている可能性もあるからです。
なので、中途覚醒を失くすことを追い求めすぎてしまうと、慢性的な睡眠不足の状態になってしまう可能性が高まります。
他にも、強い疲労やストレスが溜まっている場合も中途覚醒をしにくくなることがあります。
ただこちらも、疲労やストレスによる体への刺激によって、中途覚醒をしやすくなったり、眠りが浅くなることもあります。
例えば、「お酒を飲むと朝までぐっすり眠れる」と思っている人も、実際にはアルコールの刺激や鼻の中の血管が拡張して、呼吸が浅くなって、とても質の悪い睡眠になっていることがほとんどです。
体をとても疲れさせて眠るというのも、仕組みは違いますが、体のダメージによる刺激によって、睡眠が浅くなることがあります。そのため、鎮痛作用のあるラベンダーで眠りやすくなったり、心地よい疲労感ぐらいが睡眠に良かったりします。
通常の睡眠が中途覚醒をするものなのであれば、中途覚醒をゼロにするという考え方は、ストレスがたまりやすい考え方になります。
なぜなら、中途覚醒をゼロにするというのは、意識的にコントロールをするのが難しいからです。
意識的にコントロールするのが難しいことを追い求めると、現実的ではない考え方になっていきます。
「朝までぐっすり寝るべき」「中途覚醒がないのが正しい睡眠だ」という「べき思考」と「白黒思考」が入った、完璧主義になってしまうからです。
僕は不眠症の人に限らず、多くの人に睡眠のご相談を受けていますが、普段は完璧主義ではない人であったとしても、睡眠に対しては完璧主義になることは多いように思います。
日本人は睡眠不足で、もっと睡眠を取らないといけない。「睡眠不足はたくさんデメリットがあるよ」という情報があふれているのも「問題なのかな?」と感じます。
特に学者さんやお医者さんのような権威性の高い人に言われると、「きちんとしなければ」という意識が強く働いて睡眠の完璧主義になりやすくなります。
最近は完璧主義の人が増えていると言われますが、個人の性質と言うより、完璧主義になるような情報があふれているんだと思います。
正しいと言われる情報は、単に情報が正しいだけであって、現実的に良い効果があるかどうかというのは別問題です。経済であれば、経済学だけでは現実的に限界があるので、人間の不合理な心理を取り入れた行動経済学で補う必要があるのと同じ理由です。
中途覚醒がゼロになるのはOK。目指すのはNG
睡眠の完璧主義はNGですが、中途覚醒がゼロになることが悪いわけではありません。
中途覚醒をゼロにすることを目指すのがNGなだけです。
結果として、中途覚醒がゼロになって、7~9時間眠れているのであれば、問題ありません。
「中途覚醒をゼロにするぞ」と完璧主義になると、神経質傾向が出てしまうので睡眠に悪影響が出やすくなります。
「たまに中途覚醒をしてもいいよね」ぐらいに気軽に考えたほうが、睡眠に対する緊張やプレッシャーがなくなり、逆に中途覚醒が減りやすくなってきます。
睡眠には「安心感」がとても大切だからです。
睡眠に悩まれている方は、睡眠の完璧主義を改善していくことは大切です。
べき思考や白黒思考などの完璧主義につながる認知のゆがみは、いいところもあるんですが、睡眠においてはマイナスがとても大きいからです。
現在、不眠症改善に最も大きな効果があるのがCBT-I(睡眠の認知行動療法)なのは、長く続く不眠症の大きな原因は「認知」にあることが多いからです。
寝つきと中途覚醒の時間はどのくらいがOKなのか?
7時間の睡眠であれば寝つきに20分ぐらい、中途覚醒して寝つくまで20分ぐらいであれば、良い睡眠である可能性が高いです。
これは睡眠効率の考え方です。
睡眠効率はベッドにいる時間の間、どのくらい睡眠に費やしているかという考えです。
睡眠効率が高いと、睡眠の質が高いと考えられます。
この睡眠効率が85%以上であれば、特に問題ない睡眠と言われます。
7時間であれば、63分はベッドの上で目覚めていてもいい計算です。
寝つきに20分、中途覚醒の時に20分、朝目覚めた後に20分ぐらいベッドでゴロゴロするぐらいでも、問題はありません。
逆に「5分以内にすぐ眠れる」「中途覚醒をまったくしない」などの場合、睡眠効率が95%を超え始めててきます。
睡眠効率が95%を超えてくると、睡眠時間が足りていない可能性が高くなってきます。
日本は慢性的な睡眠不足の方が多く、残業などの労働時間も長いので、「ベッドに入るとすぐ眠れるよ」という方も結構いるんですが、それはあまり参考にはしない方がいいですね。
ただ、マインドフルネス瞑想や、特殊な睡眠訓練、メラトニン系のサプリや睡眠薬などを使えば、睡眠時間もたっぷり取れて、睡眠効率をすごく高められる可能性はあります。
睡眠を極めたい方は目指してもいいとは思うんですが、中途覚醒など眠れないことで悩んでいる場合は、まずは脳と体と心がしっかり回復する睡眠から目指していくことが大切です。
では、目指す睡眠がどのくらいかとなってくると、睡眠の推奨時間である7~9時間は眠れていて、寝つきや夜中に起きている時間が20~30分以内の睡眠です。
細かく見ていけば、7時間から9時間眠れていて睡眠効率が90%前後ぐらいが、目指すところです。
ただ、完璧主義にならず、少しずつ段階的に睡眠を整えていくことが大切です。
睡眠時間と睡眠の質をどのように少しずつ整えていくかについては、また今後お伝えしていきます。ご興味があれば、ブックマークして待っていてくださいね。
僕のブログでは、中途覚醒をゼロにするなどの完璧な睡眠を目指すのではなく、「今よりも回復する睡眠になっていくこと」を目的としています。
しかも、いきなりゴールの睡眠にたどり着くのではなくて、少しずつ良い睡眠になっていくということを大切にしています。睡眠の認知の問題を避けるためです。
中途覚醒を改善するために「睡眠の完璧主義」をやめる
中途覚醒における睡眠の完璧主義をやめるには、「中途覚醒はある程度はするもので、20~30分ぐらいは時間がかかってもOK」と、ゆるめに考えておくことです。
「夢を見た。中途覚醒をした。だから、睡眠が浅いんだ」と思い込みすぎないことが大切です。
さすがに3回も4回も毎日目覚めたり、寝つくまでに毎回30分以上かかってしまう場合は、刺激制御療法や、睡眠効率療法やリラックス方法を学ぶなど、何かの対策をしていくことは大切です。
中途覚醒で寝つくまでに毎回30分以上かかってしまう場合は、まずは「夜中は起きた時に1~2時間は気ままに過ごしてもいい」という、睡眠を2回に分ける二相睡眠型の分割睡眠をとりれいてもいいと思います。
まずは中途覚醒のストレスをやわらげていくところからスタートしていきましょう。
もしも、完璧主義をよりなくしたい思いがあるのであれば、認知を整えるシリーズの動画を出しているので、ご興味があればご覧ください。
完璧主義の改善であれば、グラデーション思考、ダブルスタンダード法、セマンティック法、証拠の検討の動画がおすすめです。
中途覚醒の注意点:家族と住んでいる場合の声掛け
家族と住んでいる方は、特別な理由がない限り、夜中目覚めていたように見えたとしても、本人には伝えないようにしてあげましょう。
中途覚醒は「夜中に目覚めた」という記憶がないほうが、「朝までぐっすり眠れた」という熟睡感が得られやすいので、わざわざ教えてあげる必要はありません。
本人が気にしてしまうと、夜中目覚めた時に「最近自分は中途覚醒が多いのかな?」と思って、中途覚醒が悪化しやすくなってくるからです。
他にも、「寝苦しそうだったけど大丈夫?」や「夜中はトイレに行っていたね?」と、あまり言わないようにしましょう。
もしも日中とても眠そうだったり、とても疲れてる様子であれば、そのときになってから対策を考えてもいいと思います。
ただ、睡眠中呼吸が止まっていたり、いつもいびきをかいていたりするのに気づいたときは無呼吸症候群の診断を受けてみるのは大切です。
特に、中途覚醒や翌日の眠気が強い場合は無呼吸症候群による悪影響が出ている可能性があります。
無呼吸症候群に関しては、確実に改善したほうが良いです。
無呼吸症候群は重症度にもよりますが、悪影響がとても強い症状だからです。
中途覚醒の問題は、睡眠そのものが問題になることもありますが、中途覚醒によるストレスの悪影響の方が大きいです。
中途覚醒ストレスの対策にご興味がある方は、YouTube動画「【音声】中途覚醒ストレスを減らし 再入眠する3つの方法」をご覧ください。
中途覚醒の本も出していますので、今回の話を聞いて、もっと詳しく僕の中途覚醒の話を聞いてみたいなと思った方は、僕の書いた「脱・中途覚醒。40の科学的根拠で”夜中に目覚める”悩みが消える」をお読みください。
Amazonの読み放題対象なので、初めての方は無料で読むこともできます。
※Amazonアンリミテッドの無料キャンペーン中の場合。
中途覚醒と睡眠の完璧主義のまとめ
- 中途覚醒は記憶に残らないことが多く、通常は夜中に複数回するものです。
- 「中途覚醒をゼロにする」という完璧主義的な考え方は、かえって睡眠の質を悪化させ、中途覚醒を増やす原因にもなります。
- 夜中に20~30分ほど目覚めていても、問題なく良い睡眠と考えられます。
- 認知の歪み(完璧主義や「~すべき」思考)は、睡眠に悪影響を与えるため注意が必要です。
- より深い理解を得たい方は、拙著「脱・中途覚醒。40の科学的根拠で”夜中に目覚める”悩みが消える」をご覧ください。