不眠症の人は、仕事や人間関係などの一般的な悩みだけでなく、「今夜も眠れないのではないか」「眠れなかったら明日に影響する」といった、睡眠そのものに関する考えを繰り返すことがあります。
この研究では、原発性不眠症の患者を対象に、睡眠に関する考えが頭から離れない状態と、一般的な心配事を繰り返し考える状態のどちらが、実際の睡眠状態と強く関係しているのかを調べました。
参考:原発性不眠症における睡眠関連覚醒と一般的な認知覚醒の比較【2012年】
【研究や論文は、chatGPTに著作権に配慮して、要点をまとめてもらっています。[ ]のメモは僕の意見・感想です】
結論
原発性不眠症の患者は、健康な人と比べて、睡眠に関する認知的覚醒と、一般的な認知的覚醒の両方が高いことが分かりました。
ただし、睡眠効率の低下、入眠後の覚醒時間の増加、本人が感じる寝つきの悪さと強く関係していたのは、主に睡眠に関する認知的覚醒でした。
一方、一般的な認知的覚醒は、睡眠状態の悪化と独立した関係をほとんど示しませんでした。
そのため論文では、不眠症に対する認知行動療法では、一般的な悩みだけでなく、睡眠への心配や睡眠不足への不安を重点的に減らす心理的介入が、治療効果の向上につながる可能性があると述べています。
内容の信頼性:8点/10点
この研究では、原発性不眠症患者182名と健康な対照者54名、合計236名を対象としています。質問票による本人の評価だけでなく、2夜連続のポリソムノグラフィーによって、脳波や眼球運動、筋活動などを測定し、客観的な睡眠状態も調べています。
また、年齢、性別、診断、一般的な認知的覚醒の影響を考慮した統計分析を行い、複数の分析によって偶然の有意差が生じる可能性を抑えるため、ボンフェローニ補正も使用しています。
一方で、研究はある時点の状態を調べた横断研究です。そのため、睡眠に関する考えが睡眠を悪化させたのか、睡眠が悪いことで睡眠への心配が増えたのかは判断できません。
さらに、睡眠測定は2夜だけであり、患者の不眠症のタイプや過去の薬物治療歴にも違いがありました。以上の点から、方法は比較的しっかりしていますが、因果関係まで証明した研究ではないため、信頼性は8点と評価します。
何の研究か?
原発性不眠症の患者にみられる認知的覚醒と、睡眠状態との関係を調べた研究です。
認知的覚醒とは、頭の中で考えが繰り返され、精神的に目がさえた状態を指します。この研究では、認知的覚醒を次の2種類に分けています。
1つ目は、睡眠に関する認知的覚醒です。眠れないこと、夜中に目が覚めること、睡眠不足が翌日の仕事に与える影響などを繰り返し考える傾向です。
2つ目は、一般的な認知的覚醒です。睡眠に限らず、未解決の問題や日常の心配事を繰り返し考える傾向です。
研究には、DSM-IVの基準で原発性不眠症と診断された患者182名と、健康な睡眠者54名が参加しました。
参加者は、睡眠と認知的覚醒に関する質問票に回答し、睡眠センターで2夜連続のポリソムノグラフィー検査を受けました。検査時間は、23時の消灯から翌朝7時の点灯までの8時間でした。
研究した理由は?
これまでの研究では、考え事が多い人ほど寝つくまでに時間がかかることが報告されていました。
しかし、認知的覚醒が、夜中に目が覚める時間や睡眠効率などの「睡眠を維持する能力」とどのように関係しているかは、十分に調べられていませんでした。
また、過去の研究では、一般的な心配事と、睡眠に関する心配事が明確に区別されていない場合がありました。
そこで研究者らは、睡眠に直接関係する考えと、一般的な考え事では、睡眠への影響が異なる可能性があると考えました。
研究の主な目的は、原発性不眠症患者と健康な人の認知的覚醒の程度を比較することと、2種類の認知的覚醒が、本人の感覚と客観的検査による睡眠状態にどのように関係するかを調べることでした。
結果はどうだったか?
| 評価項目 | 比較対象 | 結果 |
|---|---|---|
| 睡眠関連認知覚醒の得点 | 原発性不眠症患者 vs 健康な対照者 | 不眠症患者で平均12.4点高い |
| 睡眠関連認知覚醒の群間差 | 原発性不眠症患者 vs 健康な対照者 | p<0.001 |
| 睡眠効率 | 睡眠関連認知覚醒が12.4点高い人 vs 低い人 | 3.5~5.1ポイント低い |
| 入眠後の覚醒時間 | 睡眠関連認知覚醒が12.4点高い人 vs 低い人 | 10.2~17.7分長い |
| 本人が感じる入眠時間 | 睡眠関連認知覚醒が12.4点高い人 vs 低い人 | 9.4~9.5分長い |
| 客観的な入眠時間 | 睡眠関連認知覚醒が高い人 vs 低い人 | 有意な関連なし |
| その他の睡眠指標 | 睡眠関連認知覚醒が高い人 vs 低い人 | ほぼすべてで睡眠状態が悪い方向に関連 |
原発性不眠症患者は、健康な対照者と比べて、睡眠に関する認知的覚醒と一般的な認知的覚醒の両方が有意に高い結果となりました。いずれも統計学的有意差は、p<0.001でした。
睡眠検査では、不眠症患者は健康な対照者よりも、2夜とも睡眠効率と総睡眠時間が低い結果でした。
また、不眠症患者では、深い睡眠である徐波睡眠の割合と、REM睡眠の割合が減少していました。入眠後の覚醒時間、覚醒していた時間の割合、覚醒回数は増加していました。
本人による評価でも、不眠症患者は2夜とも睡眠効率が低く、入眠後の覚醒時間と寝つくまでの時間が長いと回答しました。
認知的覚醒との関係を調べたところ、睡眠に関する認知的覚醒は、客観的に測定した寝つくまでの時間を除き、調査したほぼすべての睡眠指標と有意に関連していました。
具体的には、睡眠に関する認知的覚醒が高いほど、睡眠効率が低く、入眠後の覚醒時間が長く、本人が感じる寝つくまでの時間も長くなっていました。
睡眠関連認知覚醒の患者群と対照群の平均差は12.4点でした。この差は、睡眠効率では3.5~5.1%、入眠後の覚醒時間では10.2~17.7分、本人が感じる入眠時間では9.4~9.5分の差に相当しました。
一方、一般的な認知的覚醒は、2日目の夜に客観的に測定した睡眠効率とのみ関連していました。ただし、その関係は、一般的な認知的覚醒が高いほど睡眠効率も高いという方向でした。
全体としては、一般的な認知的覚醒よりも、睡眠そのものに対する心配や反すうのほうが、入眠困難と睡眠維持困難の両方に強く関係しているという結果でした。
