スマートフォンやパソコンなどを近い距離で長時間見ると、目はピントを合わせ続ける必要があります。
本研究では、凹面鏡と凸面鏡を組み合わせた「二重鏡システム(DMS)」によって、近くにある対象物を約2.285m先の拡大された仮想像として見せた場合、近視の成人のピント調節や瞳孔の大きさがどのように変化するかを調べました。
参考:二重鏡システムを用いた近視成人における視距離延長が調節反応および瞳孔径に及ぼす影響【2022年】
【研究や論文は、chatGPTに著作権に配慮して、要点をまとめてもらっています。[ ]のメモは僕の意見・感想です】
結論
二重鏡システムを使用して視距離を0.4mから2.285mに延ばすと、目のピント調節を示す「調節反応」は平均で約1.58D減少し、瞳孔径は平均で約0.2mm大きくなりました。
調節反応は、通常の0.4mの距離では1.74±0.43D、DMS使用時には0.16±0.47Dでした。瞳孔径は、それぞれ3.98±0.06mmと4.18±0.58mmでした。
軽度近視群と高度近視群のどちらでも、DMS使用後に調節反応が有意に減少し、瞳孔径が有意に増加しました。また、DMS使用時には、ピント調節の細かな揺れである「調節微小変動(AMF)」が、0.4mの近距離を見る場合より安定していました。
研究者らは、DMSによる調節反応の軽減が、近距離作業による眼精疲労の改善に応用できる可能性があると結論づけています。ただし、この研究で直接測定されたのは調節反応や瞳孔径などであり、眼精疲労そのものの改善効果を確認した研究ではありません。
二重鏡システム(DMS)とは、凹面鏡と凸面鏡の2枚の鏡を組み合わせ、近くの物を遠くにあるように見せる装置です。この研究では、約0.4m先の物を、約2.285m先にある拡大画像として見せました。これにより、近くを見るときの目のピント調節の負担を減らすことを目的としています。
内容の信頼性:7/10点
18~22歳の60人を対象とし、開放視野オートレフラクトメーターを使って調節反応と瞳孔径を測定しています。また、倫理審査委員会の承認を受け、統計解析も行われています。軽度近視群と高度近視群の両方で、DMS使用前後に統計的に有意な変化が確認されました。
一方、対象者は平均年齢20.67±1.09歳の若い成人に限られているため、子どもや中高年にも同じ結果が当てはまるかは、この研究だけでは判断できません。また、AMFの20秒間の詳しい解析は、軽度近視と高度近視から無作為に選ばれた各1人について行われています。さらに、眼精疲労の症状自体を直接評価していないため、「眼精疲労を改善できる」という点は可能性として示された段階です。
何の研究か?
| 項目 | 説明 |
|---|---|
| 研究の目的 | 二重鏡システム(DMS)で見かけ上の視距離を延ばしたとき、近視の成人の目にどのような変化が起こるかを調べた。 |
| 調節反応 | 目が対象物にピントを合わせるために働く強さ。DMSを使うことで、この負担がどの程度減るかを測定した。 |
| 瞳孔の大きさ | DMSの使用によって、瞳孔径がどのように変化するかを測定した。 |
| 調節微小変動(AMF) | ピント調節中に起こる細かな揺れ。DMS使用時に、この揺れが安定するかを調べた。 |
| 対象物の大きさによる影響 | 対象物のサイズが異なると、調節反応や瞳孔径に違いが生じるかを比較した。 |
| 近視の程度による違い | 軽度近視と高度近視で、DMSによる目の変化に違いがあるかを比較した。 |
| DMSの仕組み | 凹面鏡と凸面鏡を組み合わせた装置。約0.4mの位置にある対象物を、約2.285m先にある3.386倍の仮想像として見せる。 |
| 参加者数 | 近視の成人60人。 |
| 参加者の年齢 | 18~22歳。平均年齢は20.67±1.09歳。 |
| 軽度近視群 | 44人。 |
| 高度近視群 | 16人。 |
近視の成人が近距離の対象物を見る際に、二重鏡システムを使って見かけ上の視距離を延ばすと、次の項目がどのように変化するかを調べた研究です。
- 目がピントを合わせる強さを示す「調節反応」
- 瞳孔の大きさ
- 調節反応の細かな揺れである「調節微小変動(AMF)」
- 対象物の大きさによる影響
- 軽度近視と高度近視による違い
DMSは凹面鏡と凸面鏡で構成され、0.4m付近にある対象物を、約2.285m先にある3.386倍の仮想像として見せる仕組みです。
研究には18~22歳の60人が参加し、平均年齢は20.67±1.09歳でした。軽度近視群は44人、高度近視群は16人でした。
研究した理由は?
電子機器の利用が増え、読書や画面を見るなどの近距離作業に費やす時間が長くなっています。論文では、近距離作業は近視の進行と関連づけられており、近くを見る際の調節ラグや調節微小変動は、網膜像の光学的な質を低下させる要因になると説明されています。
近距離を見る場合、目はピントを合わせるために強く調節する必要があります。視距離を延ばせば調節反応や調節微小変動を減らせると考えられるため、研究者らはDMSを使い、近距離の対象物を遠くにある仮想像として見せる方法を検討しました。
結果はどうだったか?
| 比較項目 | 通常(0.4m) | DMS使用時(2.285m) | 結果 |
|---|---|---|---|
| 全体の調節反応 | 1.74±0.43D | 0.16±0.47D | 約1.58D減少 |
| 全体の瞳孔径 | 3.98±0.06mm | 4.18±0.58mm | 約0.2mm拡大 |
| 対象物の大きさ | 1cm、2cm、3cmの星形 | 同じ3種類を比較 | 大きさによる有意な差なし(p>0.05) |
| 軽度近視・調節反応 | 1.68±0.42D | 0.21±0.48D | 約1.47D減少(p<0.001) |
| 軽度近視・瞳孔径 | 4.08±0.54mm | 4.27±0.48mm | 有意に拡大(p<0.001) |
| 高度近視・調節反応 | 1.88±0.25D | 0.05±0.40D | 約1.83D減少(p<0.001) |
| 高度近視・瞳孔径 | 3.77±0.87mm | 3.97±0.74mm | 有意に拡大(p<0.001) |
| 調節微小変動(AMF) | 不安定 | 比較的安定 | DMS使用時に安定した |
| AMF解析時の瞳孔径 | ― | 軽度近視で0.39mm、高度近視で0.50mm拡大 | 各群1人を20秒間解析 |
視距離を延ばした結果
視距離0.4mでは、平均調節反応は1.74±0.43Dでした。DMSを使って視距離を2.285mに延ばすと、0.16±0.47Dまで減少しました。減少量は約1.58Dです。
瞳孔径は、0.4mでは3.98±0.06mm、DMS使用時には4.18±0.58mmとなり、約0.2mm拡大しました。
対象物の大きさによる違い
DMSを通して、1cm×1cm、2cm×2cm、3cm×3cmの3種類の星形ターゲットを見た場合を比較しました。
調節反応と瞳孔径には、ターゲットの大きさによる統計的に有意な違いはありませんでした(p>0.05)。研究では、視距離が十分に遠く、必要な調節量が小さかったため、ターゲットの大きさが調節反応に影響しなかったと推測しています。
軽度近視群の結果
軽度近視群44人の調節反応は、0.4mでは1.68±0.42D、DMS使用時には0.21±0.48Dでした。約1.47D減少し、統計的に有意な差がありました(p<0.001)。
瞳孔径は、4.08±0.54mmから4.27±0.48mmへ有意に増加しました(p<0.001)。
高度近視群の結果
高度近視群16人の調節反応は、0.4mでは1.88±0.25D、DMS使用時には0.05±0.40Dでした。約1.83D減少し、統計的に有意な差がありました(p<0.001)。
瞳孔径は、3.77±0.87mmから3.97±0.74mmへ有意に増加しました(p<0.001)。
調節微小変動の結果
軽度近視と高度近視から各1人を無作為に選び、20秒間の変化を解析しました。
0.4mの近距離では調節微小変動が不安定でしたが、DMS使用時には比較的安定していました。DMS使用時の瞳孔径は、軽度近視の対象者で0.39mm、高度近視の対象者で0.50mm拡大しました。
以上から、DMSによって見かけ上の視距離を延ばすことで、近視の程度にかかわらず、目のピント調節を緩和し、瞳孔を拡大できることが示されました。
